図書館を「ひらいていく」ために
図書館の未来を考えている人は、この本を読んでやる気と勇気を引き出すべきだ。前作の『知の広場--図書館と自由』が評判だったアントネッラ・アンニョリの最新刊は
『拝啓 市長さま、こんな図書館をつくりましょう』というタイトル。
ボローニャ在住の彼女は、図書館計画のアドバイザーとして幾つものプロジェクトを手がけている。そんな彼女が、インターネットの網が世界を捉え尽くす時代になぜ図書館が必要なのか? をあらゆる側面から語り尽くすのである。
地方自治体の税収が減少する中で、その存在意義と散財意義を問われる公共図書館が「ひらいた場所」として愛されるようになるには、何よりもユーザーの居心地に力点を置くべきという彼女の考え方には頷く部分が多い。図書館を「屋根のある広場」と捉え、さまざまな公共サービスを受けられるようになれば、自ずと本へのタッチポイントも増えてくるだろう。
それは、「人が本屋に来ないならば、本が人のいる方へ」と続けてきた僕の仕事に、イタリアからの併走者が現れたような気分でもあった。
建築や内装、運営、人事など世界各国のさまざまな図書館事例を交えながら、具体的なメソッドを教示するこの本では、2013年の来日時に見学した明治大学の図書館や武雄市図書館などについても言及している。読者は、遠い場所の話題と捉えずに、図書館の抱える問題の根っこは世界共通だと知るべきだ。それは、問題を考える仲間が増えることも意味するのだから。
飛ぶ教室第46号 に寄稿